月刊パラレログラム

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備忘録を兼ねて、映画の感想など。

テンション高めにSPYの話をする

※「SPY/スパイ」(2015)のネタバレが多分にあります。

ジェンダーロールを取り扱った映画である一方で、どう考えても不同意かつ不必要に女性の胸が触られすぎだとは思いますが、2015年の映画なのでね…と思ってから、たった6年でこの価値観まで来られて良かったと思いました。

見た目と性別で無価値と決めつけることの愚かしさを取り扱った映画を、アマプラが「ジュードロウとステイサム共演!!」の煽り文のみで紹介しているの、なかなか感じ悪いですよね、私もちょっと前までバディムービーだと思っていましたからねこれを…
とはいえ一方で、事実として、ジュードロウとステイサムが同じ画面にいるとめちゃくちゃ絵面が面白いのでした。私は「自らがイケメン過ぎるためにちょっと足を踏み外すともはや胡散臭いということを把握した上でそれをごりごりに活かしたイケメンによる胡散臭い演技」が大好きなんですけど(これはトムクルーズとかヒューグラントとかが時々やる芸です)、それに「しばしば髪型を直すスパイのジュードロウ」が堂々ノミネートしましたね。自分がワイルド俳優であることをごりごりに活かしたポンコツステイサムはその亜流です。本当にすがすがしいほどのポンコツだったな!!絶対「顔移植装置」は伏線で、ジュードロウでない顔を移植されたジュードロウが「実は生きていたのさ」って出てくるんだな…と思ったらマジで顔移植装置についてその後何もなかったですからね!何もないのかよ!!
とはいえまさかジュードロウとステイサムを差し置いてラジオ版クロウリー及びショーンオブザデッドでおなじみピーター・セラフィノウィッツさんが輝いている映画とは思わなかった。この映画見た人もはやセラフィノウィッツさんのことしか覚えてなくない?というくらい強烈だった。関係ないですけどなぜセラフィノウィッツさんは日本語版Wikipediaがないのだろうか。誰か作ってほしい。あととりあえず傘持たせとけばイギリス人スパイに見えるやろみたいなのが雑すぎてやばかった。見た目で人を判断するのは可能性を狭めますよって映画じゃないのかよ!

この映画におけるジュードロウは「ハンサムで優しくて善良で強くて、女性へのリスペクトや感謝は忘れていないつもりである一方、パートナーの優秀な成績を無視して見た目とジェンダーで「君は内勤だよね~」とがっつり決めつけてくるつよつよマジョリティ」という、女性の社会進出を最も強力に阻んでくるタイプの敵なんですけど、そういう彼を例えばひどい死に方にしたり、極悪人にしたり、コメディな感じに辱めたりしないで、「よくわかってない(けどちょっとわかりはじめたかもしれない)つよつよマジョリティ」のままそっと着地させたのは、何だか逆に良かったな、と思いました。ステイサムがマジでポンコツのままだったのもそれはそれでよかったです。

しかし何よりこの映画は女性陣の映画なのであった。メリッサ・マッカーシーのアクションもスパイ的機転も実によかったなあ。有能な人がきちんと有能に立ち振る舞うのを見るのって快感ですよね。ほかにはどんな映画に出てるんだと思ったら2016年のゴーストバスターズだ…見ないと…。あと実写版リトルマーメイドのアースラをされるそうです。うひゃー楽しみ~!
レイナ・ボヤノフ(ローズ・バーン)がきゃぴっと若い女子じゃないのもよかった。というか最後の「好きなくせに!」→「私も大嫌いよ」何ですか…?何ですかあれ…?このお気楽コメディに唐突なこの…おしゃれな…私が何より大好きな、『全然仲良くなさそうでずっと喧嘩しててお互い「好き」って一言も言わないのに双方実のところ好意が育っていてお互いはそれがわかってる』みたいな…奴を…こんな少ない台詞とほんの微妙な表情で…ウワア…。
冗談抜きで、歴史に残していい名シーンではないですか…?

あと、「少年メリケンサック」に並ぶ「吐瀉物がリアルすぎる」映画にもノミネート。