月刊パラレログラム

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備忘録を兼ねて、映画の感想など。

今こそジュラシック・パークを見よう!という記事

映画『ジュラシック・パーク』(1993)が公開30周年記念ということで、今年の上半期から記念商品発売やコラボ企画をたくさんやってくれるのでついついトートバッグやキーホルダーやノートを買ったり全作品を見直したりして、改めてジュラシック・パーク…最高ムービー…(絶句)と思ったので、以下そのプレゼンを始めます。
ディープブルーの記事といい、人間パクパクパニックムービーが大好きな人みたいですが別にそういう訳じゃないんです…90年代エンタメが好きなだけで…。
※以下、未視聴の方を想定したプレゼンが始まりますが、魅力を語るためのある程度のネタバレがあります。また、併せてシリーズ他作品の話もします。

<前提の話>

ジュラシック・パークシリーズには、93年から01年にかけて公開された「パーク」3部作と2015年から22年にかけて公開された「ワールド」3部作の計6作が存在します。

ジュラシック・パーク 1993年
・ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク 1997年
ジュラシックパークIII 2001年
   (14年の空白)
ジュラシック・ワールド 2015年
ジュラシック・ワールド/炎の王国 2018年
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 2022年

ちなみに、私は1作目であるジュラシック・パークを不朽の名作、ロスト・ワールドをマルコム博士ファン専用映画、ジュラシック・パーク3はB級テイストだけど普通に面白い、ジュラシック・ワールド1作目は大健闘の快作、2と3はマジこの野郎…(とはいえ見るべきところもある)と思っています。当たり前ですが個人の意見です。
以下の本稿において、ジュラシック・パークはジュラパ、ジュラシック・ワールドはジュラワと適宜略記します。

ジュラシック・パークのここがすごい!>

・恐竜が出てくる。

何言ってるの?という感じですが…恐竜が…出てくるんですよ…。
「かつていたという恐竜というものを、この目で見てみたい」という素朴な願望を叶えてくれる映画。そう思えるくらい、映像に本当にリアルな質感がある。すごいぞジュラシック・パーク
※なお、この映画は超ざっくり言うとその「恐竜見たいな」願望のせいでどんどん人が死ぬ!っていう作品です。

・愚か者がいない。

パニック映画によく出てくる、全ての足を引っ張る問題児がいない。プロや学者ばかりが集められているので皆良識があってクレバーだし、子供たちもかなり賢いタイプです。本当にグーニーズの監督が撮ったんだろうか。
ちなみにジュラパ3だと逆にパーティにド素人が複数名おり、叫ぶなって言ってるのに叫んだり走るなって言ってるのに走ったりするのでB級度がいや増していますが、なかなかどうして、それはそれで嫌いじゃないんだ…。

・被害がほどよい。

いい人も悪い人も死にますが、生き残った中にもやはり、いい人も悪い人もいます。安易な勧善懲悪じゃないところがいいですね。あと、なんとなく予算規模を感じるくらい登場人物が少ないので被害人数も自然と抑えられています。
ちなみに、ロスト・ワールドだとものすごい善人がものすごい殺され方をするのでちょっとぎょっとする。

・子どもがひどい目に遭う。

許される範囲の限界までやってみよう!というコンセプトでスピルバーグががんばったんかなというくらい子どもがひどい目に遭います。ギークなお姉ちゃんとやんちゃな弟の組み合わせ、序盤は多少キッズ感がありますが前述のとおりきょうだい揃ってかなり賢いので、絶叫しながらもきちんと危機を乗り越えるところが大変好印象。
なお、展開や構成が本作をオマージュしているジュラワ1ではこの枠が男兄弟(16歳と10歳)になるんですが、私はこのお兄ちゃんグレイくんがシリーズ随一の推しです。お母さんには裏で「弟にいじわるする」とか言われてますがとん・でも・ない!思春期なのにてんで興味ないテーマパークに半分子守で送り込まれたお兄ちゃんとしては最大限に弟に付き合ってるし励ますし優しい、グーニーズブレンドに通ずる、洋画界に名を残すべきいい兄です。どうしてジュラワ2と3ではカメオですら出てきてくれなかったんだろう。お兄ちゃん、とこしえに健やかであれ。

・恐竜への愛と畏怖がある。

ヤギの足が飛んだり人の腕が飛んだり成人男性がばっくり丸かぶりされたりする紛れもないパニックムービーであるにもかかわらず、「恐竜ってでっかくてかっこよくてすごいよね」という畏怖が最後の最後まで失われない。エンドロールでも、人間が何人もばりばり食べられた映画の最後とは思えない壮大で美しいテーマ曲がかかります(ジョン・ウィリアムズは天才)。
個人的にジュラワの2と3が全く合わなかったのは、恐竜が『手厚く保護すべき希少で大きめの動物』に成り下がっていて、延々と「恐竜を守ろう!」「心を開いて接すれば意思疎通できる!」「共生の道を!」「殺したら可哀想!」とか言ってるところなんですが、わかるよ、わかる、「恐竜って超怖いよね~」の観点だけじゃ映画を6本も作れないのはわかる、でも私は恐竜にはずっとずっとでっかくてかっこよくてすごくて人間の力ではどうにもできない巨大な災厄のようなものであってほしかったんですよ…。
ジュラパ3部作及びジュラワの1はいずれも愚かな人間が恐竜様の領域に手を出そうとして失敗して必死で逃げ出すという話なわけで、その距離感が、凄く凄くいいと思うんですね…。

・主人公が金に弱い。

主人公であるグラント博士は恐竜を舐めている子供(※パーク内ならともかく単なる発掘現場の見学中なので舐めていてもまったく問題ない)に対して「恐竜は君のはらわたを生きたまま啜る…」などとガチビビらせに走ったりするかなり大人げない人なのですが、渋っていたパーク訪問について大富豪に「発掘資金を援助するから」と言われるなりヤッター!と素直に大喜びするところが凄く好感度が高い。人間素直が一番です。ちなみにジュラパ3でも恐竜島についてきてくれと言われさんざん渋っていたのに「小切手に好きな金額を書いてくれ…」と言われてアッサリなびきます。学習しない!
あと、上記のとおり子供嫌いであるものの、有事の際には全くためらうことなく大人の責任を果たそうと体を張るのでとても安心して見ていられます。主人公が正しくて優しくて頼もしい映画、好き。

・サトラー博士がさっぱりしている。

1作目ではグラント博士と(常時仕事中ということもあり)たぶん…付き合ってる…?という距離感、2作目は出番なし、3作目ではいつの間にか別れていて別の男性と結婚しているものの、グラント博士とも子守をお願いしたり一緒に食事をしたりという良い関係を継続中のサトラー博士。なんだか大人だなあ!いいなあ!
誰よりも判断力と勇気があり、「女性だから危険な目には遭わせられない」などと言われた時にはきちんと怒る、大変頼もしく格好いい女性です。今気づきましたけど、本作品、安易に「子どもを守ること」を女性に押し付けないでグラント博士の担当にしているところにも好感が持てるなあ。

・マルコム博士のセクシー担当ぶりが潔い。

グラント博士とその助手サトラー博士に次ぐ第3の人物であるところのマルコム博士、黒髪サングラスセクシーとして登場し女性の手を撫でまわし良識ある極論を滔々と述べ、いざTレックスが初登場したら子どもを守るために速攻名誉の負傷、その後はずっと倒れているだけで何もしないという「活躍の場のバランスおかしくない!?」という数学者(数学者!?)なのですが、動けなくなってからもシャツの前をはだけて皮肉とセクシーをぶちまく係として画面内でひたすら映えまくるので本当にすごい。4年後に続編ロスト・ワールドの主人公になったのも納得です。皆もっと元気に動くマルコムが見たかったよね。超わかる。
でもロスト・ワールドのマルコムは残念ながら恐竜の恐ろしさを身をもって知るいわば良識担当かつガチの子連れなので、ずっと真面目に焦っていてあんまり皮肉屋の陽キャという感じではないです(ただし彼女はいっぱいいる)。相当終盤まで前もはだけない。飄々とした胸元全開伊達男のマルコムにもう一度会いたい人は、ジュラワの3を観ましょう。

・ティラノがブチ格好いい。

いやもう、本当はこれだけでいいくらいです。ティラノサウルスTレックス)が。ティラノが本当に、格好いい。
ロスト・ワールドの脚本家のデスクには「1作目は恐竜が出てくるまでに時間がかかりすぎでした」というファンレターが貼ってあった(これに反省した脚本家は速攻恐竜が出てくるストーリーにした)らしいんですが、確かに本作の主役恐竜たるティラノが出てくるまでにはかなりの時間がかかります。でもその出るぞ出るぞ感によりいや増す観客の期待に120%答えてくれる恐ろしさとサイズ感と質感を持つティラノが出てくるので、もうなんていうの…アドレナリンが…凄い出ます…。
あまりにも象徴的すぎて多種多様に商品化されている、あのティラノラストカットとか…か、カッコよ…この超かっこいい恐竜がメスだっていうのがまた、何とも言えずいいですよね…。
なお、このアドレナリンをより一層、鍋が焦げ付く限界までドロドロに煮詰めたのがジュラワの1です。劇場で泣きかけました。パーク見てティラノいいなと思った人には絶対見てほしい。
逆にジュラパ3はシリーズで唯一ティラノを噛ませ犬にしている意欲作(その挑戦は買う)なのですが、代わって登場する最強恐竜の顔がファニーという致命的な欠点があります。嫌いじゃないんですけど。(ジュラパ3嫌いじゃない委員会会員)