月刊パラレログラム

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備忘録を兼ねて、映画の感想など。

『マレフィセント』を観た日記

※最初から最後までネタバレしかしてません。

マレフィセント』(2014)を観て、世の中にこんなに楽しい仕事してる人がいるのかよと思いました。
私だって、大人になって改めて『眠れる森の美女』(1959)の冒頭部を観たときに「いやこんな扱いをされたらそりゃ怒るよ。マレフィセント様が何したって言うの?」って思いましたよ。思いました。
でもこの映画を作った人たちはそこから、じゃああのマレフィセントが本当は優しい人でオーロラのことをずっとツンデレ気味に見守ってたって設定にしてさ~、3人の妖精は傲慢な役立たずで王様はダメ男の煮こごりみたいな人にして~あとお妃様は話の都合で画面外で葬っちゃってさ~マレフィセント様のめっちゃかっこいい飛行シーンと無双シーンも山盛りにして~最後は尊い母子愛で〆てアニメでは死んじゃってたマレフィセント様のこともうーんと幸せにしてもちろんカラスも死ななくて、あとずっとミュージカルのかけらもない進行をしておきながらエンドロールでだけ突然メロウな『いつか夢で』かけたら超エモくない!? って思いついて盛り上がって作品にしたってことでしょ?(そうかな?)あっ主演アンジェリーナ・ジョリーで!って言って実現したってことでしょ?すごくない??

なんかこういう、身も蓋もない言い方をすると強欲な二次創作みたいな映画観るとめっちゃ嬉しくなってしまいますね。夢がてんこもりで。
最強で悲しい過去があってその結果ツンデレだけど愛情深くてほだされてしまうクールな女王様が嫌いな人なんているんでしょうか。いるかもしれない、いるかもしれないが、少なくともほだされる人が大好きな私は存分に楽しみました…。

余韻に浸りながら情報調べたら脚本リンダ・ウールヴァートンじゃないですか~やだ~!!マジで嘘くさいですけど本当に今初めて知りました(※リンダ・ウールヴァートンは私がこの半年どハマりしてる美女と野獣ミュージカル版及びアニメ版の脚本家です)。私リンダ・ウールヴァートンの書く素直じゃない人と人間の善性と疑似家族が大好きだよ~!!

他に好きだったところ:美麗で高貴なマレフィセント様のいたずらと笑いのツボがほぼ小学生なところ。浮かばされてついてくるフィリップ王子がディズニーランドの風船みたいで常にシュールなところ。97分で収まっているところ。「指が膿んで腫れたので針を探す」という、糸車に触れてしまう極めてまっとうな理由付けがされているところ。

3妖精の名前がアニメ版と違うのは、流石に良心がとがめたんでしょうか。だとしたらステファン王も変えてあげた方がよくない!?

 

 

(追記)

後日マレフィセント2も観たので、以下感想を追記します。こちらも完全にネタバレしています。


そう…そうくるか……!
そもそも前作自体がオマージュ元を大胆に改変した作品なので、その続編ともなれば乖離はさらに激しく、もはや『眠れる森の美女』のことはいったん全部忘れようか!というレベルに達しています。とはいえこの違和感の原因は、『眠れる森』からの乖離というより前作との乖離が問題なのではないかな。

前作の肝&エモって、

・恋愛感情も血の繋がりもなく、種族も違うマレフィセントとオーロラの間に真実の愛が生まれる
・オーロラが「16歳になったらおばさんたちとの家を出てあなたと住むの」と自分で決めて、最終的には王子様の助けも実家のバックアップも受けずに妖精たちの女王(×プリンセス)になる

というところにあったと思うのですが、対して今回のラストは、

・オーロラは王子様と結婚し、アッサリ人間の国のほうにある立派なお城にお嫁さんとして移り住む(一つの国になるとはいえ)
マレフィセントは同族をいっぱい見つけ、そっちで楽しくやっていく

……親離れはまだわかるんだけど結局お互い同族でまとまるの!?っていう。台無しじゃない!?まあポスター画像を見たときには「マレフィセントに同族の彼氏(コナル)ができる」という話だったらマジでどうしようと思ってたので、そうはならなくてよかったです。マレフィセント様にはディアヴァルとのほのぼのボケツッコミコンビで末永く隠居生活をしていってほしいですね…。

それにしても続編あるあるであるところの「主人公を立てるあまりサブキャラが全員無能になる」に巻き込まれた結果、オーロラ姫の株の下がり方がものすごい。少なくともフィリップのお母さんが「あーら鉄のカトラリーがダメなのね!どうぞ手で食べて(嘲笑)」とか言い出した時点でオーロラか王様かフィリップがもっと怒らないとおかしくないか。あと森のハッピーな仲間たちがガンガン死んでしまう大ピンチに際して女王なのにあまりにも役に立たない。彼らを救ったのはひとえにディアヴァル熊の頑張りです。ありがとうディアヴァル熊。

……などと好き勝手言いつつも私は好きな映画の続編はどんな内容でもあったほうが嬉しいし絶対観たい派ですし、だいたい最初から最後まで全部よくない続編というのは世の中にほぼなくて、どこかには必ずいいところがあるものです。というわけでよかったところも書いておこう!

良かったところ:
・フィリップがずっと完璧いいやつ。ほかのメンツが不完全すぎるので完璧いいやつがいると安心する。
・ディアヴァルの衣装がかっこよくなっている。マレフィセント様とディアヴァルのほのぼのシーンは全部素晴らしかったので、そこだけをつなぎ合わせてずっと観ていたい。両家顔合わせの前の挨拶練習の場面とかめちゃめちゃかわいかったですよね…マレフィセント様がけなげで、ディアヴァルはディアヴァルで「それじゃほとんど脅迫」「さっきよりはマシ」などとコメントに忌憚がなくて…。
・3妖精(赤青緑)のうち妖精(青)が花に変えられたところ。まさか!曲がりなりにも『眠れる森の美女』のオマージュ映画で!妖精(青)が死ぬなんて展開があるとは!その制作側の勇気に本当に胸打たれました。あと、ハンサムな木が死んじゃったのがすごく悲しい。

今調べたらこの年末に3の制作が決定していたらしい。嘘だろ!ここからどうなるんだ!妖精(青)は復活するのか!楽しみです!!